家庭用蓄電池で国の補助金を使うとき、見落とされやすい条件があります。それが目標価格です。
補助額の計算や申請の手順に比べて話題になりにくいのですが、見積もりの金額が目標価格を超えると、申請そのものが受理されません。上限を超えた分が減らされるのではなく、ゼロになります。
もうひとつ厄介なのが、検索して出てくる金額がサイトによって違うことです。12.5万円と書いてあるものもあれば、13.5万円と書いてあるものもあります。実はどちらも間違いではありません。年度が違うだけです。
この記事では、SIIが公開している令和7年度補正の公募要領をもとに、目標価格の中身を整理しました。あわせて、比較する金額から控除できる仕組みも紹介します。超えそうな見積もりでも、条件によっては通る場合があるためです。
目標価格を超えると申請できない
公募要領では、目標価格を次のように定義しています。補助対象となる蓄電システムの購入価格(設備費、工事費の合計)の上限価格であり、購入価格が目標価格を上回る場合は申請不可になる、というものです。

減額ではなく申請そのものが通らない
多くの補助制度では、上限を超えた金額は自己負担になります。DR補助金の目標価格は仕組みが違い、超えた時点で受理されません。
たとえば10kWhの蓄電池を導入する場合、目標価格12.5万円/kWhで計算すると125万円が上限になります。設備費と工事費の合計が130万円だった場合、5万円が自己負担になるのではなく、申請自体ができません。
ここが、他の補助金と同じ感覚で見積もりを取ると足をすくわれる箇所です。金額の交渉ではなく、要件を満たすかどうかの問題になります。
対象になるのは設備費と工事費・据付費
比較の対象になるのは、税抜の設備費と工事費・据付費の合計です。設備費はSIIに登録されているパッケージ型番の範囲、工事費は蓄電システムを設置するのに必要最低限のものと定められています。

対象外になるものも明示されています。金融機関に対する振込手数料は補助対象外です。ただし振込手数料を取引先が負担していて、取引価格の内数になっている場合は計上できるとされています。
また、事業完了時点で使用する予定のない設備や予備品、それらに必要な工事も対象外です。交付申請時の事業計画から変更があり、DR対応不可な機器構成に変更する場合の費用も含まれません。
12.5万円と13.5万円のどちらが正しいのか
検索すると両方の金額が出てきます。結論からいえば、どちらも正しく、参照している年度が違うだけです。

公募の時期と目標価格の対応は図解のとおりです。予算年度と公募の年がずれるため、金額だけを見比べても判断できません。
令和7年度補正は12.5万円/kWh
2026年に公募された令和7年度補正の公募要領には、2025年度目標価格として設備費と工事費・据付費の税抜合計で12.5万円/kWh(蓄電容量)と記載されています。
年度の呼び方が入り組んでいる点にも触れておきます。「令和7年度補正予算にもとづく事業」が「2025年度目標価格」を用いており、公募は2026年に行われました。予算年度と目標価格の年度、公募の年が一致しないため、話が食い違いやすくなっています。
令和6年度補正は13.5万円/kWh
ひとつ前の令和6年度補正では、2024年度目標価格として13.5万円/kWhが設定されていました。2025年に公募された事業です。
つまり1年で1万円引き下げられました。蓄電池の価格が下がっている実態を反映した見直しといえるでしょう。今後もさらに下がる可能性があるため、次の公募を待つ場合は数字が変わる前提で見ておいてください。
情報を確認するときは、金額だけでなくどの年度の事業について書かれているかを必ず確かめてください。年度を書かずに金額だけ載せている記事は、判断の材料になりません。
見積もりが目標価格に収まるか確認する
目標価格を超えていると、そもそも申請ができません。相見積もりを取って比べておくと、条件を満たす価格帯が見えてきます。
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目標価格から控除できる2つのパターン
ここからが、あまり知られていない部分です。目標価格と比較する金額から、条件によっては控除できます。

公募要領には、目標価格と比較する際に当てはまるものはパターンに応じて比較する金額から控除が可能となる、と明記されています。
ハイブリッド型なら1kWあたり2万円
電力変換装置が再エネ発電設備の電力変換装置と一体型、いわゆるハイブリッド型で、家庭用蓄電システムに係る部分のみを切り分けられない場合が該当します。
この場合、当該電力変換装置の定格出力(系統側)1kWあたり2万円を控除できます。太陽光と蓄電池をまとめて導入するときによくある構成です。
逆潮流機能があれば1万円
系統連系保護装置等の認証で、蓄電池による逆潮流機能を有する場合になります。定格出力1kWあたり1万円の控除です。
両方に該当すれば3万円
ハイブリッド型かつ逆潮流機能を有する場合は、1kWあたり3万円を控除できます。いずれのパターンでも、定格出力の小数点第二位以下は切り捨てになります。
3つのパターンと控除額は図解にまとめました。いずれも電力変換装置の定格出力が計算の基準になります。
控除の存在を知らずに「目標価格を超えたから諦める」と判断してしまうのは、もったいない話です。ハイブリッド型を検討しているなら、控除後の金額で比較できるかを業者に確認してみてください。
控除を含めた計算の例
実際にどう計算するかを見ておきます。蓄電容量10kWh、電力変換装置の定格出力5.9kWのハイブリッド型で、設備費と工事費の税抜合計が135万円だった場合を考えます。
まず目標価格の上限は、10kWh×12.5万円で125万円です。合計135万円のままでは超えてしまいます。
ここでパターン1に当てはまるなら、定格出力5.9kW×2万円で11万8千円を控除できます。135万円から差し引くと123万2千円になり、上限の125万円に収まる計算です。
逆潮流機能もあってパターン3に該当するなら、5.9kW×3万円で17万7千円の控除になります。同じ見積もりでも、機器の構成しだいで結論が変わるということです。
数字はあくまで考え方を示す例であり、実際の判定はSIIの確認によります。控除の対象になるかどうかも含め、申請の前に業者へ確認してください。
目標価格以外の要件も厳しい
価格の条件をクリアしても、機器の要件を満たさなければ対象になりません。
SII登録機器であること
本事業に登録された蓄電池アグリゲーターまたは小売電気事業者が、事前に要件を満たした家庭用蓄電システムをDR対象機器として登録する仕組みです。まずSIIで事前に登録された機器であることが前提になります。
アグリ型と小売型のどちらかを選ぶ
この事業には申請のパターンが2つあります。導入する蓄電池を蓄電池アグリゲーターとDR契約する「アグリ型」と、小売電気事業者が提供するDRメニューに加入する「小売型」です。
公募要領では、申請者は自身がどちらの型で事業に参加をするのか事前に検討することとされています。契約する相手も、その後の運用も変わってくるでしょう。
DR自体にも種類があります。需要のピーク時に電気料金を値上げしたり、再エネの出力制御が発生したときに値下げしたりする電気料金型と、事前の契約にもとづいて指令を受けDRを実施し、対価としてインセンティブを得るインセンティブ型です。加入するメニューによって、実際の使われ方が違ってきます。
JC-STAR★1のセキュリティ要件
令和7年度補正から、セキュリティに関する条件が加わりました。導入する蓄電システムが採用する全ての制御システムのセキュリティに関する主要な構成製品について、JC-STAR★1を取得していることが求められます。BMS、PCS、EMSといった機器が対象です。
IP通信機能を持たないためにJC-STARの取得対象にならない機器を含む場合は、IPとのプロトコル変換を行う機器を組み入れた構成として取得している必要があります。機器の選定段階で条件を満たしているかを確認しないと、あとから変更できません。
このほか、JIS C 4414の規格に準拠したラベル表示があること、類焼試験に適合していることの第三者機関による証明書等を取得していることなども要件に含まれています。
JC-STARを取得している製品は、情報処理推進機構(IPA)が一覧を公開しています。検討している機種が載っているかどうかを、そこで確かめてください。
要件を満たす機器かどうかを相談する
目標価格、SII登録、セキュリティ要件のいずれか一つでも外れると対象になりません。制度に慣れている業者かどうかで、進めやすさが変わります。
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国の補助金同士は併用できない
併用の可否も公募要領に書かれています。

本補助金と、他の国庫補助金の併用はできません。負担金や利子補給金なども含まれます。国の制度を2つ組み合わせて、という考え方は成り立ちません。
自治体の補助金は確認が必要
一方、地方自治体が実施する補助金や助成金との併用については、当該地方自治体に確認することとされています。国同士は不可、自治体とは要確認という書き分けです。
東京都の助成では、対象経費から国および他の地方公共団体の補助金を差し引いて計算します。併用はできても、都から受け取れる額はその分だけ小さくなる仕組みです。
なお、本事業で申請している補助対象設備を他の国庫補助金でも申請し、交付決定前に他の国庫補助金が交付された場合は、速やかにSIIへ連絡することが求められています。
令和7年度補正は予算に達して終了した
令和7年度補正の家庭用蓄電システム導入支援事業は、2026年3月24日に公募が始まりました。当初の公募期間は2026年12月10日までとされていましたが、途中で終わっています。
2026年5月29日に交付申請額の合計額が予算に達したことが確認され、公募は終了しました。開始からおよそ2か月です。
予算は家庭用蓄電システム導入支援事業、業務産業用蓄電システム導入支援事業、ディマンドリスポンスの拡大に向けたIoT化推進事業の合計59.6億円のうち、54億円程度とされていました。
ひとつ前の令和6年度補正では、開始から約2か月半で予算に達しました。今回はそれよりさらに短く、予算規模も小さくなっています。申請が集中する傾向は年々強まっているといえるでしょう。
次の公募を待つ場合の準備
次の公募がいつになるかは公表されていません。過去の実施時期から推測すると春先になる可能性がありますが、確定した情報ではないため断定はできません。
待つ場合にできるのは、要件を満たす機器を把握しておくことと、目標価格に収まる見積もりを取っておくことです。公募が始まってから機器を選び始めると、2か月で締め切られる状況には間に合いません。
国の制度が閉じている間も、東京都や区市町村の補助は動いています。そちらを先に使うという選択肢もあるでしょう。
よくある質問
目標価格は税込ですか税抜ですか
税抜です。設備費と工事費・据付費の税抜合計が、目標価格以下である必要があります。
控除はどうやって申請しますか
控除は目標価格と比較する際の計算方法であり、別途申請する仕組みではありません。該当するかどうかは機器の構成によって決まるため、業者に確認してください。
目標価格を超えた場合、値引きしてもらえば申請できますか
設備費と工事費の合計が目標価格以下になれば、要件は満たします。ただし公募要領には自社からの調達がある場合は利益相当分を補助対象経費から排除することなど、経費の計上に関する条件も定められています。実態と異なる金額での申請はできません。
税制優遇とは併用できますか
税制優遇との併用可否については、それぞれの税制担当窓口に確認することとされています。
まとめ
DR補助金の目標価格は、令和7年度補正で12.5万円/kWhです。設備費と工事費・据付費の税抜合計がこれを超えると、申請そのものが受理されません。
13.5万円という数字を見かけたら、それはひとつ前の令和6年度補正のものです。年度が違うだけで、どちらも誤りではありません。
そして超えそうな見積もりでも、ハイブリッド型や逆潮流機能に該当すれば、1kWあたり1万円から3万円を控除して比較できます。諦める前に、控除後の金額で判断してみてください。
控除後の金額で条件を満たすか確認する
ハイブリッド型かどうか、逆潮流機能があるかどうかで、比較する金額が変わります。機器の構成を含めて相談できると判断が早くなります。
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