東京都で家庭用蓄電池を導入するとき、都から受け取れる助成金は蓄電容量1kWhあたり10万円です。10kWhの蓄電池なら100万円になる計算で、全国的に見てもかなり手厚い水準にあります。
ただし金額だけを見て進めると、受け取れるはずだった額を取りこぼしかねません。令和8年10月1日以降に事前申込をする場合、助成の対象になる機器の範囲が狭くなります。いま検討している方にとって、この日付は避けて通れません。
この記事では、東京都の「家庭における蓄電池導入促進事業」について、公社が公開している令和8年度の資料をもとに、単価・対象機器・加算・申請の順序を整理しました。金額の計算方法まで踏み込んでいるので、見積書を受け取ったあとの確認にも使えます。
なお区市町村が独自に上乗せしている補助もあります。お住まいの区市の制度については、記事の後半からそれぞれのページへ進めるようにしました。
東京都の蓄電池補助金は1kWhあたり10万円
東京都が実施している助成事業の名称は「災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業」で、そのうち蓄電池を対象とするものが「家庭における蓄電池導入促進事業」です。実施しているのは公益財団法人東京都環境公社(クール・ネット東京)になります。
令和8年度の予算額は約1,012億円です。これは断熱や太陽光を含む事業全体の総額ですが、都が住宅の省エネと創エネにどれだけ力を入れているかを示す数字といえます。
蓄電池パッケージと増設で単価が違う
単価は導入の形によって2種類に分かれます。新しく蓄電池システム一式を入れる「蓄電池パッケージ」と、すでにある蓄電池に容量を足す「蓄電池ユニット増設」です。

表の上限額は、後述するDR実証に参加しない場合の金額です。参加する場合はこの上限を超えて加算を受けられます。「上限120万円」とだけ書かれている情報を見かけますが、条件が付いている点を押さえておいてください。
単価には別の上限もあります。助成対象経費(税抜)を超える額は出ません。極端に安く導入できた場合、単価で計算した額より実際の支出のほうが小さくなり、そちらが適用されます。
助成対象者は機器の所有者
申請できるのは助成対象機器の所有者です。国と地方公共団体は除かれます。個人の住宅であれば、その設備を所有している方が申請者になると考えてください。
対象になるのは都内の住宅に新規で設置された機器に限られます。中古品の設置や、他所から移設したものは含まれません。
容量ごとの目安
単価に容量を掛けると、おおよその助成額が見えてきます。実際には対象経費との比較があるため、あくまで上限側の目安と考えてください。
DR実証に参加しない場合、12kWhを超えたぶんは助成額に反映されません。容量を増やすかどうかを検討しているなら、この境目を意識しておくと判断しやすくなるはずです。
令和8年10月1日から対象になる機器が変わる
この記事でもっとも伝えたいのがここです。令和8年10月1日を境に、助成対象として認められる機器の範囲が絞られます。

東京都の助成は、国の補助事業で対象機器として登録されている製品を条件にしています。登録を管理しているのは一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)です。
9月30日までに事前申込をした場合
この日までに事前申込を済ませていれば、対象になる範囲は広めです。令和4年度から令和7年度までの国の補助事業で登録された機器も認められます。
年度をまたいで登録された製品が積み上がっているため、選べる機種の幅は広く確保されているといえるでしょう。
10月1日以降に事前申込をする場合
ここから範囲が狭まります。令和8年度の二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金における補助対象機器として、令和8年度の登録済製品一覧に載っている機器だけが対象です。
過去年度の登録だけでは足りません。検討している機種が令和8年度の一覧に入っているかどうかを、契約の前に必ず確認してください。
4月1日から6月30日までの契約には例外がある
令和8年4月1日から同年6月30日までに契約を締結した事業、または契約と工事の両方が完了した事業は、この機器要件の変更から除かれます。すでに動いている案件を救済する扱いです。
春の時点で契約を済ませている方は、10月以降に事前申込をしても従来の範囲で判断されます。
10月1日までに間に合うか確認する
事前申込は契約を締結する前に行います。いま検討しているなら、9月30日までに手続きを終えられるかどうかで選べる機器が変わります。
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DR実証に参加すると加算がある
デマンドレスポンス(DR)実証への参加を選ぶと、上限を超えた加算を受けられます。DRは電力の需給が逼迫したときに蓄電池の充放電を調整する仕組みで、都はその参加を後押ししています。

機器を設置しないパターンに当てはまるのは、端末を使わないDRサービスを利用する場合や、蓄電池パッケージにIoT関連機器が最初から含まれている場合です。新設するIoT関連機器がパッケージに含まれるときは、10万円の加算だけになります。どちらに該当するかは機種の構成で決まるため、見積書の内訳を確認しておくとよいでしょう。
契約の順序を間違えると加算はゼロになる
ここで注意していただきたい点があります。交付申請兼実績報告の前に、DR実証契約を締結しなければなりません。
受付が済んだあとにDR実証契約を結んでも、上乗せは適用されません。あとから追加することができない仕組みになっているため、加算を見込んでいるなら順序を先に決めておいてください。
DR実証には期間の縛りもあります。参加を決める前に、契約期間中に求められる報告や運用の内容を業者へ確認しておくと、あとで想定と違ったという事態を避けられるでしょう。
DRという仕組み自体は、電力が足りない時間帯に蓄えた電気を放出し、余っている時間帯に充電するというものです。加算が付くぶん、蓄電池の使い方に一定の制約が加わると理解しておいてください。
助成額は2つの計算のうち小さいほう
金額の決まり方は単価を掛けるだけではありません。2つの計算を行い、小さいほうが助成額になります。

1つ目は対象経費です。蓄電池システムの機器費と工事費に、IoT機器費とIoT工事費を足し、そこから国および他の地方公共団体からの補助金を差し引きます。計算はいずれも税抜金額で行います。
2つ目は上限の計算です。蓄電容量に10万円を掛け、DR実証参加の10万円を足し、さらにDR参加に必要な機器の設置台数に5万円を掛けた額を加えてください。両方を出したうえで、小さいほうが交付されます。
国の補助金を使うと都の助成額は減る
1つ目の計算で国の補助金が差し引かれる点は、見落とされがちです。国のDR補助金を使うと、その分だけ都の対象経費が小さくなります。
「国から60万円、都から100万円で合計160万円」といった単純な足し算にはなりません。国の補助を受けたぶん対象経費が減り、結果として都の助成額が抑えられる場合があります。
どちらを使うほうが有利になるかは、機器の価格と容量によって変わります。見積もりを取る段階で、両方を適用した場合の実質負担を試算してもらうのが確実です。
なお、契約にあたってキャッシュバックを予定している場合、その額は助成対象経費から除きます。商品券やポイントといった現金同等物での還元も同じ扱いです。契約書の内訳にキャッシュバック予定額を記載して提出することが求められています。
実質負担がいくらになるか試算する
国と都のどちらを使うと有利かは、機器の価格と蓄電容量で変わります。補助金を引いた自己負担額は、見積もりを取らないと確定しません。
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申請は契約を締結する前に始まる
手続きの入口は事前申込です。契約を締結する前に事前申込を行う必要があります。

事前申込の受付通知を受け取ったあとで、工事に着手できます。工事が完了したら、すみやかに交付申請兼実績報告を提出してください。提出には期限があります。
受付期間と設置の期限
設置期間が3年近く確保されているため、工事の時期には余裕があります。ただし予算に達した時点で受付が終了する点は変わりません。
令和8年度に事前申込を受け付けた申請からは、実績報告を提出するときに金融機関発行の証明書等の提出が必須になりました。前年度までとは必要書類が変わっているので、手続きを代行してもらう場合も内容を把握しておくと安心できます。
申請の手続きは業者が代行してくれることが一般的です。ただし代行を任せきりにすると、事前申込の受付番号が手元に残らず、進捗を自分で確認できなくなります。受付番号は控えておいてください。
なお公社は、手続代行者による不正な申請への注意喚起も出しています。実態と異なる金額での申請を持ちかけられた場合は、その場で契約を結ばないほうが賢明です。
区市町村の上乗せもある
都の助成とは別に、区市町村が独自の補助を実施している場合があります。都の制度と併せて使えることが多く、自己負担をさらに抑えられるでしょう。
金額も条件も自治体ごとに異なります。1kWhあたりの単価を設定している区もあれば、定額のところもあり、そもそも蓄電池を対象にしていない自治体もあります。都の制度と同じ感覚で考えると、思っていた額と食い違うでしょう。
たとえば練馬区は、令和8年度の制度で太陽光発電に定額8万円の補助を出していますが、蓄電池は対象から外れています。金額だけを比較していると、こうした違いを見落としてしまいます。
お住まいの区市の制度については、それぞれのページで詳しく整理しました。申請の順序や区内業者の要件など、都の制度とは別に確認しておくべき点が残ります。
区市町村の一覧は都の公社も公開しているので、あわせて確認してみてください。
よくある質問
太陽光発電がないと蓄電池の助成は受けられませんか
蓄電池単独でも申請できます。事業の目的には太陽光発電による自家消費の増大が掲げられていますが、蓄電池システムの設置費用そのものが助成の対象です。
都と国の補助金は同時に使えますか
併用できます。ただし助成額の計算で国の補助金が対象経費から差し引かれるため、単純に両方の満額を受け取れるわけではありません。
都や公社の他の助成金と重ねられますか
重複して受けることはできません。同じ機器について、都および公社の他の同種の助成金を受けていないことが要件になっています。
予算はいつ頃なくなりますか
時期を断定することはできません。令和8年度の予算は事業全体で約1,012億円と大きい規模ですが、申請が集中すれば早まります。検討しているなら早めに動いたほうが確実でしょう。
参考になるのが国の動きです。国が実施していた家庭用蓄電池のDR補助金は、令和7年度補正予算にもとづくものが2026年5月29日に交付申請額の合計が予算に達し、公募を終えました。都の事業とは別枠ですが、この分野の申請がどれだけ早く集中するかを示す例といえます。
集合住宅でも対象になりますか
この事業は集合住宅も対象に含んでいます。ただし所有と管理の形によって手続きが変わるため、管理組合を通す必要があるかどうかを先に整理しておいてください。
キャッシュバックを受けると不利になりますか
キャッシュバックの額は助成対象経費から除かれます。商品券やポイントでの還元も同じ扱いになるため、実質的に助成額が減る場合があるでしょう。契約書の内訳に予定額を記載して提出することが求められています。
まとめ
東京都の蓄電池補助金は、蓄電容量1kWhあたり10万円という手厚い水準です。増設なら6万円/kWhになります。
押さえておきたいのは3点です。令和8年10月1日以降の事前申込では対象機器が令和8年度の登録済製品に限られること、DR実証の加算を受けるには交付申請兼実績報告の前に契約を結ぶ必要があること、そして助成額は対象経費と上限計算の小さいほうになることです。
いずれも金額そのものより、順序と条件の問題になります。制度を正しく理解している業者に相談できるかどうかで、受け取れる額が変わってきます。
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申請の順序や対象機器の確認は、慣れている業者かどうかで進めやすさが大きく違います。まずは条件を整理するところから始められます。
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